最近、自転車が安くなった。私が子供の頃よりも、随分と立派な自転車が量販店等で簡単に入る。私の住まいは横浜で、坂が多い為か自転車の数は少ないが、それに比して川崎は妙に多く感じる。以前に川崎の溝の口で働いていたときは、路上を行く自転車の多さに舌を巻くと共に、無料駐輪場があって、びっくりした記憶がある。横浜の駐輪場だと、月二千円以上は当たり前なのに。恐らく平地の多い土地では、無料駐輪場でも用意しない限り、放置自転車で溢れ返ってしまうのだろう。
私は前述のように坂の多い土地で暮らしているので原チャリ愛用者だが、定期券を買って駅前の駐輪場に原チャリを停めている。その有料駐輪場でかつて、フルフェイスのヘルメットを、顎のベルト切られて強奪された事がある。私の原チャリはシートの鍵が壊れているので鍵なしでもパカッと開くのだが、犯人は気づかなかったらしい。その時は会社帰りに見たその無残な光景に世を呪った。上り坂を重い原チャリを押して帰った、辛く悲しい思い出が、今でも脳裏をかすめる。
高い金を払って停めている駐輪場でも、昼間はともかく、夜中に管理人はいないので、こういう盗難事件が平然と起こてしまうのだ。
自転車を盗まれた事もある。それは、もともと細君の自転車だったが、前述の溝の口勤務が決まったとき、小雨の中、自転車に跨って輸送した。駅の無料駐輪場に自転車を停め、そのまま電車で家に帰って来た。あとは毎日、駅と会社の間を自転車で往復した。平地なのですいすい。バスよりも早い。
だがある日、帰りに会社の駐輪場で自転車を探したが見つからない。結構大きい駐輪場なので、端から端まで探すと結構大変だった。三十分以上探しただろうか。結局見つからないまま、勤務地変更となり、さっさと忘れてしまった。自転車など無くても大して困る事はない。どうせ使わないのだから。再び、自転車に跨って横浜まで輸送する事を考えれば、これで良かったのではないだろうか。
だが、これには後日談がある。それから半年後の夜中、高津警察署から突然電話があった。「自転車を発見しました」との事。夜中の零時にお巡りさんが自宅までわざわざ持って来てくれた。半年ぶりに自転車を見るとタイヤは新品になり、鍵は壊されていた。
う〜ん別に、この自転車はいらないんだけど。思ったよりも綺麗だし、いいかあ。
今では私を含む家族全員、誰一人自転車を使っていない。盗まれても、毎日使われていた方が自転車にとっては幸せだったのではないだろうか? と、思ったりもする。
初稿 二〇〇四年九月吉日
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