音もなく、ただ静かな家。
こどもたちの声も聞こえなくなって久しい。
そこに、キラキラに飾られた掛け時計さんがやって来た。
1時間ごとにいろいろな音楽が流れる。
懐かしくてやさしいメロディー。
内蔵された小さな人形たちも、音楽に合わせてクルクルと踊る。
「どう?わたしの音楽が聴けてうれしいでしょ」
自慢?
掛け時計さんが来て何日かが過ぎた。
なぜだか最近、だんだんと音が大きくなってきた。
全力投球?
周りの雑貨くんたちは、掛け時計さんにお願いする。
「掛け時計さん、もう少し音を小さくしてくれないかな・・」
「なんで?こんなに素敵な音楽なんだから、よろこびなさいよ!」
自信満々?
次第に、わがままいっぱいの音を出し始めた掛け時計さんは、他の雑貨たちに疎まれだした。
優しい音を気に入って買ったご主人様も同じ気持ちらしい。
「どうしたんだろう?とげとげしくて、うるさくなってきたような・・」
と感じ出した。
とうとう、堪りかねたご主人様は、掛け時計さんの音楽のスイッチを切った。
自分勝手だった掛け時計さんの心は沈んだ。
この家にときどき遊びに来ていた小さい子。
今日は、庭から部屋の中を覗いている。
「綺麗ね」
掛け時計さんを見て声をかけた。
その様子を見て、
「音楽も鳴るんだよ。聞かせてあげようか?」
ご主人様は、笑顔でその子に聞く。
久しぶりにスイッチを入れてもらう。
(誰かに望まれて音楽を聴いてもらうのが、こんなにうれしいことだなんて・・)
掛け時計さんは、やさしい気持ちで音楽を奏でる。
「あれっ?うるさくないじゃん」
「いい音楽だね」
雑貨くんたち、みんなの喜ぶ声。
「どうだい?きれいな曲だろう」
ご主人様は、小さい子に語りかける。
目を瞑ってやさしくハミングする掛け時計さん。