ベッドの隅に置かれた目覚まし時計。
代々の目覚まし時計が守ってきた場所だ。
そして、目覚めの悪いことを自覚しているご主人さま。
それで選ばれた、特に音のうるさいタイプの目覚ましくん。
しかし、そのことが原因で嫌がられている。
(自分で選んだくせに・・・)
と、目覚ましくんは思う。
「ジリリリリリ・・・」
いつも通りにお仕事開始。
「あー!うるせー!」
寝起きも悪いご主人さまは、目覚ましくんの頭の上のボタンを叩きベルを止めた。
「あうッ。ごめんなさい・・」
目覚ましくんは、頭をさすりながらしょんぼりする。

「もう少し静かなのを選べばよかったなぁ」
ご主人さまのつぶやきは、目覚ましくんの心に突き刺さる。
「ごめんなさい・・」
嫌われているのは判っているけれど、やっぱり少しでも好かれたい。
いつだったか、がんばって音を小さくしたら、ご主人さまは寝坊した。
目覚ましくんは、さんざん怒られてしまった。
「ごめんなさい・・」
すっかり、あやまり癖がついてしまった。

そんなある日、新しい目覚まし時計が来た。
デジタル表示の小さくてかわいいアラーム時計。
目覚ましくんは、ベッドの隅の代々受け継がれてきた場所から退かされてしまった。

翌日から、アラームちゃんがベッドの隅でお仕事始め。
「ピピッピピッピピッ・・・」
見かけと同じで、かわいい音だ。
しかし案の定、音が静か過ぎてご主人さまは二度寝。

一方はやさしい音だが起きれない。
また、一方はうるさい。
迷ってしまったご主人さま。
「10分ずらして、セットしてみるか?」

結局、ベッドの隅に並んで置かれたふたつの目覚まし時計。
「よろしくね」
「よっ・・よろしく」
照れる、目覚まし時計くん。

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