ご主人さまは、まだ小さい。
けれど、長靴くんも、まだ子供。

長靴くんはこの家に来てから、下駄箱に入ったことがない。
仕舞うと小さなご主人さまが、怒り出すのでいつも玄関に出しっぱなしになっている。
小さなご主人さまは、買ってもらった長靴を履く日が待ち遠しい。
「早く雨降らないかな〜」
玄関で、長靴くんを見ると、必ずこの一言をポツリ。
それというのも、長靴くんが来てから、晴れの日が続いているからだ。
「雨。ぜんぜん降らないね」
雨が待ち遠しいのは、長靴くんも同じ気持ち。

待ちに待った雨が降り出したのは、風の強い日が続いた後。
ぽかぽか陽気だけれど、朝から曇り空。
お昼前から、とうとう降り出した雨。

毎日、午後からお買い物に出かける、ママと小さなご主人さま。
晴れている日は、途中にある空き地で遊ぶことが多い。
その空き地には、雨降りのとき水溜りができる。
長靴くんが来るまでは、ただ眺めるだけだった水溜り。
今日は、空き地に入るやいなや、次々と水溜りを探すことに余念がない。
「汚れるからやめなさい」
と言う、ママの言葉にも耳を貸さない。
この日を楽しみにしていた、小さなご主人さまは制御不能。
ジャブジャブと水溜りの中に入って行く。
長靴くんも、
「だめだヨ!」
と言いつつも楽しくて仕様がない。
困ったものだ。
「あ〜あ、また中に水が入っちゃった。ぼくが、いる意味がないなぁ」
ぼやくが、すぐに、
「まっ、いいか?」
立ち直りの早い長靴くん。
歩き回る小さなご主人さま。
長靴くんは、保護者のような気持ちと、一緒に遊びたい気持ち。
(どちらをの言うことを聞けばいいのかな?)
迷ってしまって、わからなくなる長靴くん。

ママの顔色を見る、長靴くん。
その瞬間、
「危ない!」
ママの声。
泥に足を取られてツルッ。
「アッ!」
もう遅い。
全身泥だらけで、泣き出した小さなご主人さま。
「ごめんなさい。ぼくが、よそ見していたから」
長靴くんも涙がこぼれて来た。

翌日は、すっかり晴れて、ひなたぼっこのふたり。
「怪我がなくて良かったね」
と、逆さに干されている長靴くん。
「また、雨が降ったら遊ぼうね」
と、小さなご主人さま。

懲りないふたりである・・・。

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