この家には、ミホちゃんと言う小さい女の子がいる。
手を拭くのときもテーブルを拭くときも、ティッシュくんからシュッシュッって何枚も取って使う。

手が汚れたら洗う。
テーブルを拭くときは、台拭き。
おかあさんに注意されても、なんでもティッシュで拭いてしまう習慣がぬけない。

ティッシュを引っ張るミホちゃんに逆らって、取られまいとするティッシュくん。
「おかあさんに無駄に使っちゃダメって言われてるでしょ」
と、ティッシュくん。
その気持ちも伝わらず、お互いに、引っ張りっこしていると、途中で切れてしまった。
ミホちゃんは、切れたティッシュを捨てると、以前、見た光景がかさなる。

ミホちゃんのお気に入りの洋服が古くなったので、おかあさんはそれで雑巾を作った。
切られた洋服を見て泣いたミホちゃん。
おかあさんはこう言った。
「着ないのに、ただ仕舞われている洋服はかわいそう。生まれ変わってまた、みんなの役に立つのよ」

ティッシュくんは思う。
(ときどき、雑貨くんたちがうらやましくなる。買われたときからわかっていたけれど・・。ぼくは、雑貨くんたちとは違う。最後は、ゴミになって捨てられてしまうんだから・・。悲しくないけど、少しさびしい)

ある日、ミホちゃんはおやつを食べていたら、コップに肘が当たってジュースをこぼしてしまった。
「あっ!」
ミホちゃんは、慌てて何枚もティッシュを取りテーブルの上を流れて広がっていくジュースを拭き取る。
ティッシュくんが止める間もなくどんどん減っていくティッシュ。
ポイポイ捨てられてゴミ箱に溜まったティッシュ。
それを見て、なんだかかわいそうな気がしてきたミホちゃん。

ティッシュは生まれ変われない。

ミホちゃんはティッシュくんを持ち上げて見る。
最初よりずいぶん軽くなった。
残り少ないのが判る。
それを境にミホちゃんは、一枚一枚を考えて使うようになった。
それでも毎日少しづつ減っていくティッシュ。

「もうじきお別れだね・・」
ティッシュくんは、ゴミ箱に入る前にミホちゃんへ言った。
「大切に使ってくれて・・・ありがとう・・・」

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