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マッチョでしょ

第一章 「胸、肩、そして上腕三頭筋」1−4

 さらに重量を増加する。バーの左右に二十キロずつ、合計で九十キロになる。私の体重はちょうど八十キロなので、自重より多少重い程度ということになる。これで六レップ二セットのウォームアップを行う。調子の悪いときはこの段階で肩が痛かったり、違和感を感じることもある。そんな時はろくなことがおこらないが、今日は大丈夫のようだ。充分に体も温まり、胸や肩にどっと血流が流れ込む。  次は本番セットだ。十五キロプレートをさらに二枚追加し、合計重量百二十キロとする。私の本番セットはワンセットのみ。このワンセットで一気に限界まで搾り出すが、フォースドレップは行わない。私はストレートで追い込むことが出来るからだ。それに危険なほどの高重量も行わない。自分でコントロールできる重量のみを挙上する主義だ。だから補助も要らない。  目を閉じて意識を集中し、「挙げられるはずだ」と頭の中で何べんも繰り返す。集中力が頂点に達したとき、ベンチに横になる。歯を食いしばり、百二十キロを上げる。今までは八回までしか上がらなかったが、今日は九回行けるような気がする。昼間、仕事をしながら何度も頭の中でシュミレーションをしていた映像そのままに、バーベルが胸の上を往復する。 「一、二、三……」  頭の中で数を数える。声には出さないが、喉から搾り出される吐息はまるで蒸気機関車のようだ。 「八……」  バーを差し上げ、腕を伸ばしている状態、つまりロックして息を整える。これで八回挙げた。「あと、もう一回は?」首の中に心臓があるかと思えるほど、どくどく脈打つ音が聞こえる。 「いけるか?」瞬時に判断する。  ここで無理をすれば体重の一.五倍もあるバーベルに押しつぶされかねない。 「充分いける」私はそう判断し、最後のレップに挑んだ。 「九……」  食いしばった歯の間から呻き声が漏れる。ガタンッという大きな金属音と共にバーがラックに戻る。  無事、レップを終えた。

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