OG部活
2016年3月の橋本先生の退職記念パーティーの折に集まった卒業生たちと会って、“OG部活を作りたい”という思いが更に強くなりました。私は結構思いつきで動いてしまう性質です。このパーティーの挨拶の中でつい「部活作るから」「顧問は橋本先生にお願いする」とぶち上げてしまいました。
しかしいろいろ考えていくと、具体的にどんな方法でそれを実現するかはなかなか難しいことだと思い至りました。ネックとなるのはそれぞれの卒業生が学業や仕事、家庭、子育て等…様々な事情を抱えていることです。
数ヶ月間、部活立ち上げの方法を模索して、とりあえず卒業生たちに次の三つの条件で参加を打診してみました。
…練習日は相談で決める。子連れOK。
◇練習は1回3時間。自宅での練習は不要。
…時間のない人、楽器のない人もいるので。
◇10月の私主催の勉強会で曲を発表する。
…もちろん強制ではない。練習だけの参加もOK。
このメールに反応してくれたのは今年中等部を卒業して24年になる5人でした。現在私のところにお稽古に来ている若手(もちろん卒業生)と合わせて十分に合奏できる人数です。
こうしてOG部活は動き出しました。
最初の練習日、不安と期待で私は死ぬほど緊張していました。でもふたを開けてみたら楽しくて…『案ずるより産むが易し』とはこういうことなのかと実感しました。 OG部活の練習で気付いたことがあります。それは"中学生には無限に時間がある(と勘違いしている)“ということです。OG部員たちの練習は真剣そのものでした。大人になるということは人生が有限であることを知ることなのかもしれません。 練習の様子は部員のみんなの感想文でご想像下さい。
2016年10月9日(日)私の主催する梨音会の温習会でついにOG部活の曲の発表を行いました。当日は顧問の橋本都美子先生にもおいでいただき、OG部活立ち上げのためにお言葉をいただきました。
以下は部員の感想文です。
漆戸智恵さん
『高等部卒業以来まったくお琴に触れることなく、今回のOG部活、そして発表会に参加させていただきました。当初は不安もあり、また、満足に弾けるようにならずご迷惑をお掛けしましたが、自分としてはとても楽しい体験でした。
その楽しさは、楽器の修練に伴う楽しさであり、仕事ではなかなかできない「失敗を恐れずに全力で取り組む」ことから得られる楽しさであり、何人もの人と息を合わせて演奏する合奏の楽しさであり、かつての部活を思い出して気持ちが若返るような楽しさであり、旧交を温める楽しさでありました。
特に、社会に出てさまざまな経験をしたあとで、自分がまだ十代のころに知り合ったコーチや仲間たちと再会し、一緒に時間を過ごしたことで得られた喜びは、他のことに例えられない、得難いものだったと思います。この点では、今回のOG部活は、知らない人の中で一から習い事を始めるのとはまったく異なる経験でした。
来年以降もぜひまた参加させていただきたいと思います。ありがとうございました。』
SKさん(一人だけ恥ずかしいから実名が嫌ということで・・・)
『今回、久しぶりにみんなでお琴の合奏しよう、と、衣笠先生からお声がけいただいたのですが、正直なところブランクも長く、できるわけないと思っていました。一度はお断りのメールを出したのですが、お返事の中に人生は短いよ、とのお言葉があり、妙に納得するところがあり、恥ずかしげもなく参加することにしました。
やってみたら、本当に楽しかった!ずっとお琴に触りたかったんだな、と気づきました。
練習日の朝は朝ごはんにドトールに寄ってから行っていたのですが、サンドウィッチを買っても、一口も食べられない!食べようと思って買っているのに緊張のあまり食べられない。こんな経験初めてしました。意外に繊細な心!と思いました。
きついけど楽しい。きついから楽しい。そんな感覚を思い出しました。
昔から人と話すのが苦手で、コミュニケーションの取り方がわからず、悩んでいました。それは今もそうなのですが、演奏では、話さなくても心をひとつにできるような、そんな感覚が私にとっては本当にうれしかったです。
どうしても時間的な制約があり、十分な練習時間が取れませんが、それが許されるのであれば今後も細々と部活に参加させていただければ、と思っておりますのでよろしくお願いいたします。』
山田陽子さん
『“4回集まってお稽古するだけで発表会に臨む”という計画を衣笠先生から提案されたときには、とうてい完成しないのではないか、と疑う気持ちが大きかったのですが、初回のお稽古が終わったときには、その不安は払拭されていました。
中学生の頃そのままに、衣笠先生に導かれ、仲間とひとつの方向を向いて支え合う、張りのある2ヶ月間になりました。どうもありがとうございました。』
佐野綾子さん
『今回のお稽古、演奏会は参加させて頂き本当にありがとうございました。
お稽古をしたいと思う気持ちは常に頭の片隅にあるものの、日常を考えるとできるわけがないと諦めていました。そんな中、先生の「お稽古の時だけ練習すればいいから、やりましょう!」という言葉に背中を押して頂いたような気がします。
始めは最後まで弾ければいいと思っていたものが、もう少し練習すれば弾けるはずなのに!という気持ちが強くなり…結局、実家の楽器を引っ張り出して練習していました。
先生にお稽古して頂き、同期や後輩と合奏する日がまた来るとは思ってもいませんでした。皆で練習している空気、先生の「練習してきてね!!」という言葉(笑)、どれも懐かしく当時に戻ったようでした。
本番も、出来はともかく今までで一番楽しい演奏だったと思います。このような機会を頂き本当にありがとうございました。』
高橋真理さん
『顧問の先生の退職を機に発足した箏曲部OG部活。
今回、衣笠先生(当時はコーチと呼んでいました)にお声がけいただき、中学生のとき以来20数年ぶりにお稽古、そして発表会に参加させていただきました。
琴に触れることがあまりに久しぶりすぎて、しかも練習時間が限られているなかで、いったいどれだけのことができるのだろう…と最初は不安でしたが、それ以上に学生時代の友人との練習、合奏が本当に楽しく、毎回ワクワクした気持ちで練習に参加しました。
学生時代、指に水膨れを作りながらも必死に練習した記憶が蘇り、先生に怒られることさえ、中等部の部活を思い出して懐かしい気持ちになりました(笑)。
発表会本番の演奏は満足のいく出来ではありませんでしたが、学生時代をともに過ごした友人たちとの再会、1つの目標を仲間とともに目指す喜び、みんなで1つの曲を作り上げていく楽しさ、普段の生活ではなかなか味わうことのできない発表会での緊張感と達成感…。私にとって、大変貴重な経験となりました。
お稽古では毎回二人の子連れでご迷惑をお掛けしましたが、いつも0歳の息子を抱っこしながら(!)お稽古してくださった衣笠先生、途中で飽きてしまう4歳の娘の相手をしてくれた友人、応援してくれた家族など、支えてくださった皆さまに感謝致します。来年は娘も一緒に参加できればと思っています。』