先生と師匠

 人は人生において様々な方の影響を受け人格が形成されます。しかし“この人がいなければ今ここにいる自分もない”と思えるような人と出会うことはそうそうあることではないと思います。幸せなことに私には今でも心からお慕いし、尊敬するお二人の師と出会いました。
ここでは私がもっとも大きな影響を受けたお二人ー上木康江先生と竹内駒香師匠ーについて思いつくままに書いていきたいと思います。

先生が亡くなって25年、お師匠さんが亡くなって10年。この機会にお二人のことを私なりに納得のいく形で残しておきたいというのがこのページを作る大きな原動力になりました。
「親子は一世、夫婦は二世、師弟は三世」という言葉があると或る方に教わったのは駒香師匠が亡くなって、失意のどん底にいた頃のことです。親子よりも縁の深い師弟の縁…不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私には妙にすとんと自然に納得できました。“この世では一旦お別れしたけれど、いつかまた先生やお師匠さんに会える”と思うと、悲しみが去るわけではないけれど嘘のように気持ちが楽になったものです。

手元にある広辞苑第四版によれば
<先生>
@ 先に生まれた人。A学徳のすぐれた人。自分が師事する人。B学校の教師。C医師・弁護士など、指導的立場にある人に対する敬称。D他人を親しみまたはからかって呼ぶ称。
<師匠>
@ 学問・技芸などを教授する人。先生。A芸人に対する敬称。
とあります。なんだか違いのよくわからない解説です。邦楽の世界ではその方のお立場や習慣によってこの呼び名のどちらも使います。

上木康江先生は芸大で教えていらしたので、お会いした当初から“先生”とお呼びしていました。
 竹内駒香師匠は大阪・北新地の芸妓さんでした。同業の方からは“駒香姐さん”と呼ばれていましたが、私は同業ではない業界の方が呼ぶようにお師匠さんとお呼びしていました。

 このページではお二人との出会い、その後、その人となりなどを思いつくままに書いていきたいと思います。

©2015 Kazuyo Kinugasa